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不登校・・・学力って何?2

今までに不登校を経験した子どもたちが、自分の望む程度に学力をつけて進学していく現状を書いてきましたが、高校を卒業したり大学に入学するまでに、人より時間がかかることは多いです。
 ある通信制高校に行っていた大学生は、高3になって周囲が受験勉強に熱くなってくるころ、その雰囲気に馴染めず学校からも一時遠ざかっていたのですが、卒業したとたん「やっと自分の進路を冷静に考えられるようになった」と言って、大学受験の予備校に通いだしました。

 中学時代不登校を経験したある大学生は、高校の指定校推薦で大学入学が決まったにもかかわらず、本当に自分の学びたいこととは違う気がすると断り、もう一年勉強しながら志望する専攻のある大学を探して入学しました。

 同じく中学時代不登校になり、公立高校に進学したけれど、人に合わせてばかりいて、面白くもないのに笑っている自分に気づき、学校へ行けなくなった子どもさんが居ました。その後、
定時制高校に転学して、いろんな年代の人、職業の人と出会い、視野がひろがり、やっと自分を見つけたと言います。
 
通信制高校に行きながら、バイトをつづけ、そこで認められ、8年間バイトと高校を併行しながら過ごし、卒業と同時に正社員になった人もいます。

中学まで行ったり行かなかったりを繰り返し、高校から自分に合った環境になり登校できるようになって、大学卒業後公務員になった人もいます。

公立高校に入ったけれど、またがんばり過ぎて息切れして行けなくなり、その後通信制高校には入り直し、推薦で大学が決まった人。

一人ひとりの話を聴くと、それぞれにつまづき、挫折したり、立ち止まったりしながら、そのとき親を始めいろんな人に支えられる経験をし、その度に「悩む力」を鍛え、人格を高めていく体験をして大人になっていってるのだなと思います。
そう思うと、高校を3年で卒業して就職したり、あるいは大学や専門学校に2年なり4年通って、就職して・・。という決められたコースに従って成長していくことが、その人の人生にとってどれだけ意味があるのでしょう?

ゆっくり自分のペースで人と関わったり、仕事をしたりしながら将来の目標を決めるということが今の教育制度ではできないようです。
それは、日本の教育にお金がかかりすぎるということもあるでしょうし、
企業があるいは公務員が新卒採用を重視するということもあるでしょう。

欧米のように大学まで親が過重な負担をしなくても済むなら、行きたいときに行きたい人がいけるのになと思います。だから、大学入学時の平均年齢が26歳という国もある。これって、ちゃんと自分の学びたいことがわかってるから、本来の学び方だと思うのです。偏差値の輪切りで志望校を決めたり、意味もなく難関大学を志望したりするからやる気のない大学生が増えるのではないでしょうか?意味もないことはなくて、有名大学出身だったら、やはり大きな企業、安定した職業につくことができるのでしょうね。
95年以降、正社員を減らし、非正規を増やしていった時期は、そんな常識?がくずれて行ったらしいですが、それって、有名大学でも就職困難だから、それ以下だったら就職もできないことになるんでしょうか?
これはニートとかフリーターが増えてきたり、プレカリアートと言われる働いても貧しい若者たちの問題につながっていきます。と考えると、労働法改正とか政治の問題にもなるので、
教育の領域でだけ論じていても、らちがあかないんですよね。
不登校になって、親が必死になって学校へ戻そうとする余裕のなさは、こうした社会背景もあるのでしょう。
本当はゆっくり休ませて、子どものしんどさを受け入れたほうが、回復は早いんですけど。


つづく