14・・・人間関係を育てる

 中学卒業の直前、中学3年生の2学期、3学期ごろから学校へ行けなくなった子どもにとって、周囲が進路を決めて行く中で、その焦りと不安は想像するに難くありません。急に潮がひくように自分のまわりに誰もいなくなってしまったような疎外感や置き去り感を感じて孤独にさいなまれていきます。親からは、今時分行けなくなってどうするのかと責められるでしょう。
 学校から、来るように言われるのもつらいですが、ほっとかれるのもつらいという自己撞着に陥るでしょう。

こういう場合には、どんな方法があるのでしょうか?いろんな人を見ていて、思うことを書いてみます。


 ひとつは、進路決定の時期がつらすぎるなら、一年間「家を居場所にして過ごす」という選択肢もあります。充分に心を休めて、好きなことやりたいことにじっくり取り組む時間が保証されます。それを通じて友達ができたり、知り合いのところでバイトをしたり、ボランティアをしたり、フリースペースに行っていろいろな活動に参加したり、・・・などの過ごし方をしている子どもたちがいます。
 2〜3年家で過ごしてじゅうぶんエネルギーが溜まったら、なんらかの動きを見せはじめて、自分で必要を感じると高校に行ったり、高認を受けたりしています。
中には、好きな本を思い切り読みたくて、何年も家にいる子どもさんいます。
何年間かバイトをして、通信制高校に入り、バイトつづけながら併行して高卒資格をとっていく人もいます。


 もうひとつは、どこかに所属していないと精神的に不安定になってしまうのであれば、不登校を経験した子どもを多く受け入れている高校を親に探してきてもらって、その学校の感想を聴いたり、パンフレットやHPをみて、比較的合っているなと思うところにとりあえず入って、高校生活に馴染めるかどうか、少しずつ様子をみるという方法もあります。
中学時代にどんな経験をしたかでもちがいますが、中3で行けなくなった子どもは、「教室」に入れないほど心が傷ついている状態で卒業を控えているのですから、新たに高校という「教室」を見学するには、まだ元気が回復していないことが多いのです。カウンセラーから、子どもも一緒に見学に行ったほうがいいと言われ、でも目の前の子どもは落ち込んでいて動けそうにない、という事態に悩む親御さんもいます。
子どもが、どこでもいいから進学したいというなら、親だけでも複数の学校に相談に行き、子どもに情報を伝えていくといいでしょう。子どもが興味を示して、見学に行ってみようかと言い出すかもしれません。
入っても行けるかどうかは分からないけれど、それでも本人の安心のために入学金を納めても良いと思われるなら、手続きしてあげたらいいと思います。それぞれに家計の事情はちがいますから、通学できるかどうか不確定なら、お金は出せないと思われたら、子どもに事情を説明して、相談して授業料の安い進路を選択していかれたらいいと思います。
親がこれだけしてやったんだから、どうしても通ってほしいという気持ちになるなら、行けなくなったとき、子どもの落ち込みは深刻になります。
頭で行かなくてはという思考と心のしんどさとの葛藤がたかまり、自分を責めて精神的に非常に不安定になります。


どちらにしても、親子、家族とのコミュニケーションがよく、家がある程度安心できる居場所になっていれば、何とかなっていく子どもがほとんどです。その間に、ひと回りもふた回りも大きく成長しています。


要は学校であれ、学校以外であれ、どんな人間関係を経験して、そこから何を学んでいるのかがとても大切だなと思います。豊かな人間関係が紡いでいけたら、その子にとって一生の財産です。高校卒業が何年か人より遅れても、それ以上に得たものの方が大きいと言えます。

つづく