空の巣症候群とは・・・。

 2週間くらい前、気がついたのだった。

マンションの1階の一部が駐車場になっているんだけど、
天井に配水管がみえていて、
その配水管と天井のすきま15センチくらいの間に、
配水管の上につばめが巣をつくっていた。

中指の先くらいの小さな黒い頭が、
くの字を横にしたようなくちばしをつけて並んでいた。
そして、その5つのくちばしが一斉に「こわ」っと開いたかと思うと、
ジジジジジジジ・・・・・・・・・・・・・・・・
と電気仕掛けのばねみたいに
ビブラートするのだ!
(ピイピイなんてかわいい声ではない。)

うわっ、何だなんだ?これは?と思うまもなく、
親ツバメが、これ以上忙しいことはないというふうに、
飛んできて、
5つの穴のどれかに目にもとまらぬ速さで、
えさを放り込むやいなや、
またぴゅーんと飛び去っていく。

そのとたんに、「穴」は「く」の字に戻り、
何事もなかったかのように、
しーんとしずかになるのです。

この生きようとするすさまじい食欲は、感動もの!
巣の奥のほうに押しやられている子なんぞは、
指先ほどの頭をロクロ首のように思いっきり必死で伸ばして、
張り裂けんばかりに顔中を口にして、
ジジジジジジジ・・・・・・

その精一杯さに胸がつまってくる。


台風のときは、雨風に吹き飛ばされては居ないかと心配だったけれど、
翌日、ひとまわり大きくなったくちばし達をみてほっとした。

昨日、あれれ、親が巣の中に入っているよ?
と思ったら、
今日は、全員いなくなって、
つーい、つい、と
何羽もつばめたちが飛び回っていた。

あとには、薄汚れた泥のかたまりだけが残っている。

大きな喜びと虚無感。さびしい〜。

空の巣症候群って、いきいきと親子が暮らしていた
子育ての跡形もなくなった泥のかたまりだったんですね。