父からの招待状

ひと月ほど前に、父がお世話になっているホームの夏祭りがあったそうだ。

ホームのスタッフの方たちで相談されて、
せっかく今とても落ち着いて暮らしているから、家族の人には、今は来てもらわない方がいい、
ということで、家族には知らされなかった。

他の入居者のご家族が来ているのを見て思い出したのか、
父が私に会いたがったそうだ。
何で来ないのかと、父が一番頼りにしているスタッフに言うので、その方が答えに詰まって、つらくなってしまわれたようだ。


ホームのケアマネさんが、
「またいつかは、お父さんといっしょに住むことはあるんですか?それとも私達の家族として一生お世話すると考えていいののですか?」と、聞いてこられた。
私達の覚悟を迫られてるようで、つらかったが、
私は、「すまないけれど親よりこどもたちのほうが大事です。私は、子どもを守らなければなりませんから。」と言った。

父を引き取ることになれば、
家を借りて、私ひとりだけ家族と離れて父の面倒をみなくてはならなくなるだろう。
一日中、大きな声で悪口雑言をまきちらし、いつ外へ徘徊するかわからない老人といっしょでは、
子どもたちの精神生活はめちゃくちゃになってしまう。
父にとっても、周囲にいつも関ってくれるやさしい人たちがいるほうが、ずっと快適に暮らせる。


さいわい、このホームの代表の方は、
この仕事に使命感をもってやっていらっしゃることがわかる。
チームワークもよく、ミーティングでオープンに入居者の状態や、その対応を話し合っていて、介護のプロ意識を感じる。
自分の大切な人を、信頼して任せられることは、
なんてありがたいことか!


学校も、幼稚園も、保育園も
こんなふうに安心できたらいいのにね。


先日、父からぶどう狩りの招待状が届いた。
何度も、ちゃんと届くのかどうか聞いていたのだそう。

几帳面な筆文字で、「早穂様」と宛名が書いてあるのをみると、字が滲んでくる。
これも、出したことを忘れるかもしれないから、
忘れていたら、来ていただかなくてもいいです。と言われている。
会わないことが、本人のためになるのなら、
気持ちだけ飛ばしておこうと思っている。